1.卵巣嚢腫


卵巣腫瘍には大きく分けて良性、悪性、中間性の三種類があります。このうち、良性のもので内部に液状物を入れた嚢状の腫瘍を、特に卵巣嚢腫と呼びます。漿液性嚢腫、粘液性嚢腫、皮様嚢腫などがあります。

1.概要
 卵巣嚢腫は全卵巣腫瘍の約8割を占め、女性の病気としても子宮筋腫とともに頻繁に診られる病気の一つです。厳密に言えば卵巣嚢腫というのは腫瘍性増殖を示す良性の新生物のことなので、チョコレート嚢腫やルテイン嚢胞はそういう意味では卵巣嚢腫ではありませんが、実際には混同して使われていることが多いようです。この二つの嚢胞についてはここをご覧下さい。

2.症状
 一般的には、あまり大きくない嚢腫のうちはまったく無症状です。
かなり大きくなっても気がつかないこともあり、また気がついても痛まないので放置されることも多いです。
 目立ってお腹が大きくなってくると、圧迫による症状として、頻尿、排便・排尿障害、胃腸障害、呼吸逼迫などの症状が出てきます。

 *卵巣嚢腫の茎捻転*
 特異的な症状として、茎捻転による症状があります。これは、嚢腫の根もとの部分でねじれることにより起こるもので、突然下腹部にひどい痛みを感じる場合も珍しいことではありません。ねじれにより嚢腫部分の血行が途絶えて壊死することも多く、このためほとんどのケースで緊急手術が必要となります。
 下に示した写真で、左側が嚢腫部分、右側が子宮ですが、その間の部分でねじれている所が茎捻転を起こしたところです。


3.治療
 嚢腫が小さいうちは非腫瘍性のものとの鑑別が困難なので、経過観察するのが一般的です。そして、増大傾向のあるものについては、手術摘出が基本となります。大きいものであれば、茎捻転の可能性を考慮してすぐに手術となることが多いです。
 手術には、開腹手術と腹腔鏡による手術とがあります。それぞれ手術の項を参照にして下さい。

4.非腫瘍性のものについて

  チョコレート嚢胞
子宮内膜症が卵巣に起こることによりできる嚢胞で、毎月の生理の時にこの部分でも出血するため、徐々に卵巣内に血液が貯留してできる嚢胞です。子宮内膜症の治療で生理を止めることにより、縮小することがありますが、手術治療が必要なこともあります。

  ルテイン嚢胞
妊娠初期に、妊娠時特有のHCGというホルモンが卵巣を刺激するために起こるもので、胎盤の形成とともにHCGが減り始める妊娠8〜10週頃までは増大傾向を示しますが、それ以降は自然に退縮します。従って経過観察が基本ですが、時に茎捻転や破裂・腹腔内出血などのために手術が必要となることがあります。
 また、胞状奇胎に頻繁に認められ、この場合には治療に伴い消失していきます。

 


2.卵巣癌


1.概要
 卵巣癌は卵巣嚢腫と異なりほとんどが充実性のものです。つまり、嚢の中身は液状物ではなく、固形物が占めることがほとんどで、この相違が卵巣嚢種との鑑別を比較的容易にしてくれます。
 卵巣癌の特徴として、実に多岐にわたる組織型の癌が発生すること、初期癌として発見されるケースが少ないこと、容易に腹腔内に進展することなどがあげられます。卵巣嚢種と同じく、茎捻転を起こさない限りはほとんど症状として現れないため、進行してから発見されるケースが大変多いのです。
 そして、進行してから見つかるケースが多いもう一つの理由は、子宮癌のように検診法が確立していないことでしょう。今のところ、超音波による検診が最良と考えられますが、これとてごく初期に捕まえることは至難の業です。

2.症状
 卵巣嚢腫と同じくほとんど症状としては現れません。腫大して腹部が膨隆したり、それによる圧迫症状が現れたり、あるいは茎捻転を起こして腹部に激痛を感じたりすることで発見されることも多いです。

3.治療
 治療はやはり手術療法が主体となり、化学療法、放射線療法が組み合わせて併用されます。手術は癌の進行の度合い、年齢や挙児希望の有無、疑われる癌の組織型などにより決定されますが、やはり個々のケースで考慮されるのが普通です。卵巣癌の場合は特に手術によりどれだけ摘出できたかにより予後が左右されるので、手術が最も基本的な治療法となります。
 手術は大まかにわけると以下のようになります。

   片側付属器摘出術ーー片方の卵巣だけ取る、と考えて下さい。
   付属器摘出術+子宮全摘術ーー両方の卵巣と子宮を摘出します。
   上記+リンパ節郭清術ーーリンパ節も取ります。

 この他、症例により大網切除、腸管切除などが併せて行われます。
 手術の項も参照して下さい。


卵巣癌の一例です。

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