以下の手術について簡単に述べてあります。

   1.腹式単純子宮全摘出術
   2.筋腫核出術
   3.広汎子宮全摘出術
   4.付属器摘出術
   5.帝王切開術


1.腹式単純子宮全摘出術

 子宮筋腫、子宮内膜症などに対して主に行われますが、子宮癌の初期、胞状奇胎、産科的緊急時などにも行われることがあります。
 膣に顔を出している部分、子宮膣部までを含めて、子宮全部を摘出する手術で、子宮を摘出する手術の基本となるものです。
 開腹手術が適応になるのは、癒着の可能性がある、子宮筋腫がかなり大きい、膣式の手術が無理である(後述の膣式単純子宮全摘手術を参照)、以前に開腹による手術を受けている、悪性のものの疑いがある(手術部位を拡げなければならない可能性がある)などの理由によります。
 この手術により子宮を全部摘出するということは、
 1)妊娠することができなくなる
 2)生理がなくなる
 3)筋腫などの疾患の再発という心配はない
 4)卵巣を取らない限りホルモンバランスが乱れることはない
ことになります。
 よくある誤解は子宮を摘出するとホルモンが足らなくなり更年期障害を招きやすい、というもので、実際には子宮からは女性ホルモンは分泌されてはいないので、直接的に更年期障害を招くことはありません。しかし、手術というストレスのために更年期症状を引き起こす可能性はあります。

 さて、子宮を全部取ってしまえば子宮ガン検診は必要ないか?
 これも絶対に必要がないとはいえません。
子宮ガン検診では細胞検査により異常な細胞が出現していないかを調べますが、子宮を摘出したあとにも膣断端部から癌が発生することがないとはいえません。ですから、こういうことがないかどうかの検査として受ける必要性はあるでしょう。

 *膣上部切断術について。
  癒着がひどいなどのために、子宮頚部まで摘出が不可能な場合があり
  ます。この時には、やむを得ず子宮体部のみを摘出する、膣上部切断術
  という術式を選択することがあります。


2.筋腫核出術

 子宮筋腫に対して子宮を温存するのが目的で行われる手術です。
 子宮筋腫は、筋腫核と言って筋肉の固まりで出来た「こぶ」を形成することが多く、この「こぶ」が妊娠時の着床の妨げになったり、流産や早産の原因となったり、あるいは月経血の量が増えたりする原因となります。
 この「こぶ」だけを摘出するのが筋腫核出術です。
 目的が子宮の温存にあるということから、この手術の後に妊娠を期待することになりますが、もしも期待通りに妊娠した場合、出産はやはり帝王切開が望まれます。どのような手術をしたかにもよりますが、大抵は子宮筋層中の筋腫核を除去することでこの部分が弱くなっていることが想像され、陣痛開始によりこの部分で子宮破裂をおこす可能性があるからです。
なお、最近では腹腔鏡による筋腫核出術を行うことも試みられるようになってきましたが、残念ながらまだ一部の施設で試験的に行われているというのが実情です。


3.広汎子宮全摘出術

 子宮、あるいは卵巣などの悪性腫瘍に対して行われる手術です。
 子宮、卵巣、卵管の切除に加えて、これらを支持する靱帯を切除し、膣壁も充分な長さに切除、そして骨盤内のリンパ節までを切除します。
 骨盤内組織を広汎に摘出するために、術後は炎症(骨盤死腔炎)、尿管瘻(尿が膣から出たりします)、膀胱麻痺、便秘、リンパ液貯留などの副次的症状を発症しやすく、この点が広汎手術の問題点でもあります。近年では、膀胱などの神経麻痺は子宮傍結合組織の切除時に切除範囲を縮めることで対処可能なことから、疾患の程度によって縮小を試みる傾向にあります。
 とはいえ、癌組織は可能な限り手術にて摘出することが治療の基本でありますから、浸潤の疑いのある部位は徹底的に切除することが望ましいことは間違いありません。


4.付属器摘出術

 卵巣腫瘍に対して行われる基本的な手術で、卵巣、卵管を切除します。
 卵巣の良性の病変に対しては腫瘍部分のみを摘出する卵巣嚢腫核出術も行われます。これは卵巣の正常な部分を残すこと、すなわち卵巣機能を温存することを目的として行われますが、これが不可能な場合には付属器摘出術を選択するのが一般的です。
 悪性腫瘍が疑われる場合、癒着が激しく卵巣を残すことが無理と考えられる場合、高齢の場合などでも付属器摘出術が行われます。また、悪性腫瘍では子宮や大網、リンパ節、時には腸管までを切除する場合もあり、個々の症例により適切な手術法を選択しているのが現状です。


 **ホルモン欠落症状について**
 さて、卵巣は女性ホルモンを分泌する臓器ですから、卵巣を摘除すればホルモンが欠落します。通常は片方の卵巣のみの摘除であれば、残りの卵巣が代行してホルモンの分泌を継続するためホルモン欠落による症状はあまり顕著には現れません。しかし、両方の卵巣を摘除してしまった後は、ホルモン欠落による症状を起こすことが多く認められます。すべての人に認められるわけではないのは、卵巣摘除により完全に女性ホルモンがなくなってしまうのではなく、副腎という臓器からもわずかながら女性ホルモンが放出されているために、顕著に現れる人とそうでない人とがあるのです。しかしすでに更年期を過ぎてしまっている人ではあまり顕著ではないのが普通です。
 ホルモン欠落による症状及びその治療については、更年期障害とほぼ同じであると考えてかまいません。これについては更年期障害の項を参照して下さい。  


5.帝王切開術

 骨盤が極度に狭い場合、赤ちゃんの頭が骨盤に比して大きい場合(児頭骨盤不適合(CPD)といいます)、赤ちゃんが危険な状態に陥った場合(切迫胎児仮死)、母胎が分娩に耐えられないと判断された場合(心疾患など)、逆子で自然分娩は危険であると判断された場合(ここを参照して下さい)などが、帝王切開の適応と判断される主な理由です。
 通常は臍下を縦に10cmほど切開して赤ちゃんを娩出しますが、最近は前回の手術の時に縦に切開しているなどの特別な理由がない限りは、横切開により手術を行う施設も増えています。当院でも特別の事情のない限り横切開することを基本としております。

開腹しない手術へ