1.流産と切迫流産

 妊娠が22週以内に中絶してしまうことを流産といいます。これに対して、切迫流産とは、流産しかかっているけれど治療により継続が可能な状態を指します。良く聞かれることですが、切迫流産の状態から持ち直したときに、出産後新生児に奇形などの異常が見られるようになるのではないか、という事については、まず心配はないと言って良いでしょう。
 流産には様々な原因が考えられますが、しかし原因不明であることが最も多いと言われています。概して胎児側に原因があることが多い、ということは間違いのないことのようです。流産は全妊娠のうちの約10%を占め、およそ10人に一人の割合で流産が起こると考えて良いでしょう。

 
*習慣性流産について
連続して3回以上の自然流産を繰り返すことを習慣性流産と言います。近年、この原因として免疫系の関与が示唆され、ご主人のリンパ球を用いた免疫療法が行われるようになりました。当院でもこの治療を受けることができますので、流産を繰り返し経験された方は一度ご相談下さい。

2.子宮外妊娠

 子宮の内腔以外の場所に妊娠することを子宮外妊娠と言います。多くは卵管に妊娠しますが、まれに卵巣、腹膜に見られることもあります。また、子宮の出口、頚管部に妊娠した場合を特に頚管妊娠と言い、これも異常妊娠の一つです。
 

卵管妊娠
子宮の内腔と違い、卵管は受精卵の成長とともに発育していくことはできませんので、いずれ限界が生じて中絶に至ります。この時に、卵管流産の形を取ると、症状はゆるやかに悪化し、また卵管破裂の形を取ると劇症として現れます。
 下腹部痛、不正出血が主な症状ですが、卵管流産ではゆるやかに経過しますので、前に切迫流産の経験のある方はこれと誤解しがちです。しかし、卵管破裂の形を取らなくても劇症として現れることもあります。
 劇症として現れると、急速に腹腔内へ出血することによる症状、すなわち下腹部の激痛、顔面蒼白、呼吸逼迫、冷汗などが出現し、ショック状態となります。腹腔内への出血の量にもよりますが、かなりのケースで輸血が必要なほどに出血が起こりますので、放置すれば死に至るものです。
 治療は、開腹により卵管を摘除(妊娠の部位により子宮の一部または子宮膣上部を摘除)するのが原則です。しかし、近年では腹腔鏡による手術もその成果が認められるようになってきており、当院でもケースによっては腹腔鏡下で手術を行っております。また、症状が軽いものについては、MTXという抗ガン剤に準じた薬剤による治療を行う場合もあります。

     卵管流産        卵管破裂
頚管妊娠
子宮頚管部に妊娠したものをいいます。頚管部も卵管同様に、受精卵の成長とともに発育することができませんので、いずれは中絶に至りますが、頚管部が血流が豊富であることなどの理由により大抵は大出血を起こします。 原則的には開腹による子宮摘出術を行いますが、症状が出ていないか軽症のものは、MTXという薬剤で治療することもあります。人工妊娠中絶の経歴のある人がほとんどであり、掻爬がその原因として重要視されています。
 左の写真は頚管妊娠の子宮の摘出標本です。
中央上半分が子宮体部といって正常に妊娠する部分、下半分の部分が子宮頚管に妊娠し、流産に至った部分で、この部分から大出血が起こります。


3.胞状奇胎

 
 受精卵が子宮内膜に着床すると、卵の外側を覆っている細胞群が、木が根をはるように延びていき子宮側から酸素や栄養分を取り入れるように働き始めます。これを絨毛といい、やがてこれは胎盤を形成するようになります。
 この絨毛が嚢胞状に異常増殖する疾患が胞状奇胎です。外見がブドウの房状に見えるため、ブドウ子とも呼ばれます。軽い流産様症状(下腹痛、出血)がある一方で、ひどいつわりの症状が出現します。また、卵巣にルテイン嚢胞が見られるケースが多いようです。
 子宮内掻爬により胞状奇胎を除去するのが原則的治療法で、通常二度に分けてこの処置を行います。が、この疾患の場合は処置後の1〜2年間の管理が最も重要で、この間は基礎体温、HCG測定(妊娠反応、もしくは血液検査)などの検査が必要となり、処置後にHCGの消失が悪い例や経過中に再上昇するものでは、子宮摘出術を行ったり、MTXという薬剤で治療したりします。


  破壊性胞状奇胎と絨毛癌

胞状奇胎が、子宮の壁(筋層)を破壊して侵入するものを破壊性胞状奇胎といいます。子宮摘出術を行うのが一般的ですが、症例に応じてMTXで治療する場合もあります。
 絨毛を形成する細胞が悪性増殖したものを絨毛癌といい、胞状奇胎、流産の後だけに限らず、正常分娩後にも起こり得ます。子宮筋層を破壊し、壊死、出血を起こし、また血流にのって全身へ転移を起こします。
 手術による病巣の除去、及び抗ガン剤を用いての治療が主体となります。


4.血液型不適合妊娠

 最も問題になるのはやはりRh不適合です。この場合、Rh(−)のお母さんのお腹の中にRh(+)の赤ちゃんが出来たときが問題となります。通常、赤ちゃんの血液はお母さんの血液とは混じり合いませんが、何かの原因でお母さんの血液に混じってしまった場合、お母さんの方は赤ちゃんの赤血球を異物と見なしてしまい、これに対する抗体を産生します。この抗体は胎盤を通過するため、赤ちゃん側へ容易に移動し、赤ちゃんの赤血球をどんどん破壊していくため、溶血性貧血、さらには胎児水腫を起こす結果となります。お母さんがRh(+)であればこのような問題は起きません。もしも溶血性貧血を起こしてしまった場合には、胎児の交換輸血を行います。
 この予防的検査として、妊娠中には間接クームステストを行います。母胎にその抗体が出来ていないかどうかの検査です。そして、分娩が終了してから72時間以内に抗Dヒト免疫ガンマグロブリンを注射して、母胎に抗体を作らないように予防します。これにより次回の妊娠でも抗体産生が起こらないようにします。

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