1.弛緩出血

 分娩後は子宮は急速に収縮して子宮底部(子宮の一番上部、頭方よりの部分)は、臍の下にまで下がってくるのが通常ですが、この収縮が不十分なために子宮内での出血が止まらなくなって大出血をおこすものを弛緩出血といいます。
 早急に子宮を収縮させる必要があり、子宮のマッサージ、双手圧迫法、お腹に氷を乗せる、などの処置を行いますが、出血が止まらない場合には手術で子宮を摘出することもあります。ごく短時間の間に大量の出血を起こすこともまれではなく、母体死亡の危険性の高い疾患といえます。
 この疾患自体はそれほど珍しいものではありません。が、早急な処置を施すことにより軽度の出血でおさめることが可能でもあります。従って、これを敏感に察知した先生の迅速な処置により表面化せずに過ぎ去っている場合も多いわけです。
 とはいえ、どうしても出血が止まらない場合ももちろんあり、この場合には先述のように子宮を摘出せざるを得なくなります。


2.児頭骨盤不適合(CPD)

 母体の骨盤が胎児の頭部に比して狭いために、正常分娩が不可能であると考えられる状態を指します。
 通常骨盤の入り口は、恥骨後面から仙骨岬(せんこつこう;背骨から骨盤の骨に変わる部分と考えて下さい)までは10.5〜12.5cmありますが、これが10.5cm以下であったり、あるいは児頭大横径(児のこめかみからこめかみまでの長さと思って下さい)が11cm以上あるような巨大児であると、骨盤を通過することが出来ません。従って、このようにCPDと考えられる場合には帝王切開術の適応となります。
 この判断をするために、骨盤レントゲン写真を撮影するのが普通です。


3.子宮破裂

 過度の陣痛にもかかわらず分娩が進行しない場合や、陣痛誘発剤の乱用、胎児位置の異常、あるいは前回に帝王切開で分娩している場合などのために、子宮が破裂する場合があります。腹腔内に大量の出血を起こすため処置が遅れれば母体死亡の危険性が高くなります。
 破裂した部位に激痛を感じたあとに、出血性のショック状態に陥ります。顔面蒼白、チアノーゼ、冷や汗、震えなどが見られ、やがて意識を失います。胎児は数分間は動いていますが、通常5分以内には死亡するに至ります。
 可能な限り早く診断をし、手術することが唯一の治療法ですが、それでもほとんど胎児を救うことは不可能であり、母体の生命にすら危険を及ぼしますので、このような理由からむしろ破裂の可能性が十分考えられるのなら、事前に帝王切開で分娩することを選ぶのが最良の方法といえるでしょう。


4.骨盤位(逆子)

 胎児が子宮の出口の方に臀部あるいは足部を向けている状態を、骨盤位といいます。骨盤位のまま分娩するということは、通常の頭位での分娩に比べて非常に危険を伴います。もちろん、自然分娩することも可能ですが、その場合には、
   ・骨盤に充分な余裕があること
   ・単臀位(おしりから娩出する方向で分娩が進行する場合)であること
   ・なるべく臍帯巻絡のないこと
 など、なるべく危険性が少ない状態で娩出することが望ましいのは言うまでもありません。


 左の図は、骨盤位のうちの臀位を示したものです。このように、両足を胸の方へ伸ばした状態で、骨盤にはおしりだけが向かっていく状態を単臀位といい、これが骨盤位で分娩するのには最も危険性の少ない形です。

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